Dr.ひげくまの診療開始5分前

2010年9月1日 by Dr.ひげくま

私はDr.ひげくま。

しばらくの間、駄文におつきあいいただきたい。


月に2回、自宅に訪問診療にうかがっていたAさんの認知症がここ数か月でぐっと進んできた。

何をするにも怒りっぽくなり、気に入らないと家族に当たり散らす。

足腰も弱くなり、始終家族の手が必要だ。

家族も精神的にきつくなってきていた。


そのAさんが、老人保健施設に入所することになった。


高齢者の介護の問題には「唯一の正解」というものはない。

家族が出した選択が正解、ともいえる。


年老いた親の面倒は家族の手で見るべき、という考えだけではやっていけなくなってきている。

これは、家族の怠慢とか心掛けが悪いとかでは決してない。

昔と違って、家族の人数も小さくなり、介護にかけられる人手が少なってきてもいる。


介護がつらくなって、家族間が不仲になり、

昔の楽しかった思い出が傷ついたり、家族の間で感情的に深い溝ができたりするくらいなら、

適切な選択をして、いい関係を保てたほうがずっといい場合もある。

2010年8月24日 by Dr.ひげくま

私はDr.ひげくま。

しばらくの間、駄文におつきあいいただきたい。


芸能リポーターの梨元勝氏が肺がんで亡くなったとのこと。

病気が分かったのが6月ということだ。


肺癌は、大きく2種類に分けられる。

小細胞がんと非小細胞がん、だ。

非小細胞がんはさらに、腺がんと扁平上皮がんと大細胞がんに分けられる。

このうち、小細胞がんはとびぬけて進行が速い。


肺がんは早期発見、早期治療が必要な病気だ。

非小細胞がんが手術でとりきれる大きさで見つかって、手術できれば、

小さくてその場にとどまっていれば8割がた治る。

しかし、ある程度まで大きくなると、たとえその場にとどまっていても、

治る確率は6割に減る。

もし、がんの近くのリンパ節に転移していれば、

小さくても、大きくても治る確率は5分5分になる。


もし、肺の外に転移を起こしているようだと、手術はできない。

この場合、残念ながら目標はどれだけ長く生きるか、に代わる。


小細胞がんは、その場にとどまっていれば、

放射線と抗がん剤で治療できるが、治る確率は4人に1人だ。

もし、肺の外に広がっていれば、3年生きのびる人は1割くらいになる。


怖い病気だ。

2010年8月20日 by Dr.ひげくま

私はDr.ひげくま。

しばらくの間、駄文におつきあいいただきたい。


最近のニュースで、新型の薬剤耐性菌が話題になっている。


どうやら、細菌感染の治療につかう抗生物質のほとんどが効かない菌が、

新たに発生して問題になっているらしい。

簡単に言うと、この耐性菌は、抗生物質を分解して無効化する物質を作り出すことで、

抗生物質が効かなくなる。

特に問題なのは、医療現場で使われている薬のうち、最も強力な抗生物質すら分解することだ。

さらに、この抗生物質を分解する能力は、単に同じ細菌に受け継がれるだけでなく、

同じ場所にいる他の細菌にも引き継がれる可能性がある点も恐ろしい。


ただし、現在確認されている耐性細菌の種類は、怪我をしてそこに付着するか、

体が弱って抵抗力がなくなるかしなければ、問題にはなりにくい菌であり、

感染者の周囲にいる人にどんどん感染してバタバタと人が倒れていくようなものではない。

いたずらに恐れることはない。


1942年にペニシリン系抗生物質が誕生してから70年弱の間に、

薬と細菌のいたちごっこはずっと続いている。

おそらく医学が進歩して今回話題になった細菌にも効く抗生剤が作られたところで、

そのうち更なる耐性菌が発生してくるに違いない。


これは、抗生物質を使い続ける限り逃れられない宿命なのかもしれない。


少しでも耐性菌の発生を遅らせたり、発生する確率をさげたりするには、

安易な、もしくは中途半端な抗生物質の使用を控えるしかない。


結局、必要な時に必要な薬を適切に使用するに限る、ということになる。

2010年8月18日 by Dr.ひげくま

私はDr.ひげくま。

しばらくの間、駄文におつきあいいただきたい。


外来通院中の患者さんが発熱し、体調が悪いということで入院してもらった。

やや胸部レントゲンでやや影があり、軽い肺炎だろうと考えて治療していたが、

抗生物質の効きがよくないため、念のため検索したら、結核菌が痰から検出された。

肺結核だったのである。

一目でそれとわかる肺結核もあれば、十分に検査してみないとわからないものもあるのが、

結核の難しいところだ。


結核のうち、痰などで患者さんから結核菌が出てきている場合は、

結核病棟への入院治療が必要なのだが、

小樽に実際に使用している結核病棟を持っているところが、ない。

札幌に頼る必要があるのだが、実際にはなかなか受け入れてもらえず、

受け入れ先が決まるまで、難儀した。

ゴシップの類なので、話半分に考えてほしいが、

ある1か所の札幌の病院で聞いた話では、

その病院は結核の関連で小樽市保健所と折り合いが悪く、

小樽市からの患者は受け入れが困難らしい。


残念ながら、小樽市では、結核患者さんは安心して治療が望めない状況にあるのは確かだ。


小樽で働く医者としては、こういった問題こそ、行政主導で何とかしてほしいものだと思う。

2010年8月10日 by Dr.ひげくま

私はDr.ひげくま。

しばらくの間、駄文におつきあいいただきたい。


まだまだ暑い日々が続いている。

汗をかいた分は、水分と塩分の補給を怠らないようにしてほしい。


さて、この暑さの中では塩分補給を勧めているが、

本来は塩分の摂り過ぎは高血圧の原因として注意が必要だ。

自然界、特に陸上では、「塩」は本来貴重なもので、

ほとんどの生き物は体の中の塩分を無駄に失わないようなつくりになっている。


このような塩分節約の体の働きが、先祖代々受け継がれ、

塩が比較的簡単に取れるようになった現代日本では、

むしろ塩分の過剰摂取を助けている。

つまり、高血圧の家系の方は、大昔なら健康で長生きした家系だったのかもしれない。


高血圧で外来を受診されている方で、薬をいくら調節してもなかなか血圧が下がってくれない方がいる。

こんな方の中で、何かの理由で入院することになり、入院生活を続けていると、

血圧に対する治療は変えてないのに、劇的に血圧がよくなる方がいた。

おそらく、病院での食事での塩分に比べれば、

気を付けていたとはいえ、ご家庭での食事の塩気がまだまだ強かったのだろう。


また、「塩」というものは、さらに、ナトリウムと塩素に分かれるのだが、

血圧に主に関係しているのはナトリウムのほうである。

つまり、「塩」の形で摂っていなくても、「~ナトリウム(Na)」というものが結果的に多ければ、

塩を取っているのと変わらなくなるかもしれないので、注意していただきたい。

ちなみに、旨味調味料(化学調味料)は、多くの場合、グルタミン酸ナトリウムである。


残暑お見舞い申し上げます。

2010年8月6日 by Dr.ひげくま

私はDr.ひげくま。

しばらくの間、駄文におつきあいいただきたい。


毎日暑い日が続いている。

熱中症にはくれぐれも注意してもらいたい。


さて、以前、日射病・熱射病の対策について書いたとき、

首筋やわきの下、太ももの付け根を冷やすとよいと書いた。

これは、この場所に太い血管が走っており、

この血管を冷やすことで、血液を冷やし、体温を下げるのに効率が良いからだ。


また、テレビでも再三報道されているが、プールや海水浴で、水につかっていても、

熱中症にはなる。

これは一見水で体が冷やされているようだが、直射日光にさらされることで、

体温が上がりやすく、また、体が濡れることで、書いている汗が分かりづらく、

脱水を見逃しやすいためだ。

プールや海水浴に出かけてたら、ぜひ、こまめに日陰で休んだり、水分補給を心掛けてほしい。


さらに、小さなお子さんは、地面からの照り返しで予想以上に体感温度が上がっている。

親御さんが暑い時はお子さんはもっと暑くなっていると考えて、常に様子を見てあげてほしい。

同じ理由で、犬などのペットの散歩にも気をつけてもらいたい。

我が家のボストンテリアも、数年前の暑い夏に一度熱中症で倒れたことがある。


明日は立秋。暦の上では、もう秋だ。

2010年7月31日 by Dr.ひげくま

私はDr.ひげくま。

しばらくの間、駄文におつきあいいただきたい。


夏でも風邪を引く方は少なくない。

また、小樽では集団で発熱が続いているところもあり、

昨年の新型インフルエンザ騒ぎの再来が懸念されている。


風邪やインフルエンザにかかると治るまでつらいので、かからないのが一番である。

そのためにできる今から予防をおさらいしておこう。


一番大切なことは、体を健康に保つこと。

寝不足や栄養不足を避けることだ。

当たり前のことだが、実は難しい。


次に、風邪が流行りだしたら、むやみに人ごみに外出しないこと。

これも、言われればその通りだが、やはり実行は難しい。


確実にやっておきたいことは、こまめな手洗いとうがいだ。

インフルエンザにしろ、風邪にしろ、

ウィルスは咳やくしゃみで周囲に飛び散る飛沫に潜んでいる。

これを直接吸い込む以外に、飛沫がついた場所を触った手にウィルスが移り、

その手で目や鼻をこすることで、ウィルスを呼び込むことになる。

また、体内に入ったウィルスはほとんどの場合、のどの粘膜で増える。

積極的なうがいでこれらを早いうちに排除してやったほうがいい。


外出から戻ってきた後、食事の前、外出先で何かを食べるときは、

きちんと石鹸をつけて手洗いをし、可能であればうがいをするとよい。


そして、残念ながら発病してしまった場合は、

むやみに外出せず、家でおとなしくしていることだ。

外に出なければならないときは、マスクをしていただきたい。


ちなみに、インフルエンザの簡易検査は、

38度以上の発熱が始まって、1日たってからの検査が一番信頼できるので、

発熱してすぐに受診するより、少し様子を見てからのほうがいい場合も多い。


この時期から、心構えをしておくことをお勧めする。

2010年7月29日 by Dr.ひげくま

私はDr.ひげくま。

しばらくの間、駄文におつきあいいただきたい。


もし、目の前で急に人が倒れたら。

おそらくほとんどの人はあわててしまって、右往左往するしかないだろう。

あとから思い返して気まずい気分になるくらいなら、少し勉強しておいて、

いざという時に備えておいたほうがいい。

少し長くなるが、要点を触れておこう。


人が倒れていた場合にどうするか。

まずは周りの人に異常を報せることだ。

恥ずかしがらずに、「大変です!誰か来てください!」と叫ぼう。

人が来てくれたら、救急車をとにかく呼んでもらおう。


救急車が来るまでに、まず確認してほしいのが、

意識はあるか?

息はしているか?

脈はあるか?

だ。

一見してわからなければ、まずはその人の耳元で大声で声をかけてみる。

反応がない場合は肩をたたきながらもう一度声をかける。

これで返事がなければ、意識はない。

息をしているかどうかは、胸の動きを見る。

よくわからなければ、自分の耳を相手の鼻や口に近づけてみるとよい。

脈は、手首や太ももの付け根、首筋に指先を当てて確認するのだが、

経験がないと難しいかもしれない。

いずれも、あるかどうかがはっきりしない場合は、

じっくりと確認に費やす時間がもったいないので、「ない」と考えて行動しよう。


意識があれば、とりあえず、特にすることはない。

救急車が来るまで、相手を励まし続けてほしい。

ただし、最初に合った意識が急になくなることもあるので、

注意深く様子を見て、意識がなくなれば、

最初からなかった時と同じように行動してほしい。


意識がなく、息をしているときは、

吐くなどしてのどが詰まらないように、横向きにしておくとよい場合が多い。

ただし、明らかに首にけがをしているようなときは、そっとしておこう。


意識がなく、息もしていない場合、まずは空気の通り道を確保する。

仰向けにした状態で、額を片手で抑え、もう一方の手で顎を上げる。

ちょうど寝たまま頭を後ろに反らせた形になる。

口の中に何か詰まってないかも確認できたらなおいい。

これで、息を吹き返さない場合は、脈もないことが多いので、

次の項目と同じに行動するとよい。

よく、口対口の人工呼吸を勧められるが、

一度もやったことがない人がやっても効果的でないこともあり、

私はお勧めしない。

もちろん、市民救命救急講習などを受けていらっしゃる方は、

できる範囲で積極的に行動されるのは非常に喜ばしいことである。


さて、脈もない場合。

一刻も早く心臓マッサージが必要だ。

これも本来は救命救急講習などで、適切な方法を習った人がやるのが効果的だが、

そんな人がいなければ、そうも言ってられない。

やり方は、簡単に言うと、

へそから上に進んで胸の骨とぶつかるところ、

つまり左右の肋骨の合わせ目のところに、

両手の手のひらを重ねて置き、強く押す。

押す回数は1分間に100回くらい、

押す強さは胸に当てた手が10㎝程沈み込むくらいがいい。

強く胸を押したら、骨がバキッというかもしれない。

構わないでほしい。あなたが胸を押すのをやめたら、助からないかもしれない命だ。

肋骨は生きていればいずれ治る。

心を強く持って、どちらを優先するかよく肝に銘じてほしい。


ここまでできれば、上出来だ。

救急車が来るまであきらめずに続けてほしい。

不安であれば、市民救命救急講習などで学んでほしいと思う。

2010年7月27日 by Dr.ひげくま

私はDr.ひげくま。

しばらくの間、駄文におつきあいいただきたい。


風邪を引いてから咳がなかなか取れない、と外来に来る方がいる。

ほとんどの方は、感冒後遷延性咳嗽と呼ばれる、

風邪のせいで気管支の粘膜が刺激に弱くなった咳の出やすい状態なので、

咳止めを飲んで様子を見ていれば自然によくなることが多い。

たまに別の病気が潜んでいることがるので、

2週間以上咳が続く場合は胸部レントゲンを取るようにはしている。


最近の傾向として、風邪症状の後に咳が続いている方で、比較的強い咳が出ている人に、

百日咳の人が混じるようになってきた。

百日咳というと昔の病気、子どもの病気のように感じられるかもしれないが、

最近増えているのである。

ただ、子どもが初めてかかる百日咳では非常に形にはまった症状がでて診断しやすいが、

大人が百日咳にかかった場合は、症状ではわからないことも多い。

正確にはのどを綿棒で拭って、それから百日咳菌を確認する必要がある。

また、採血で百日咳菌に対する抗体価(免疫力の指標のようなもの)を調べる方法もある。

もちろん、100%白黒がつくわけではないが、典型的な検査結果なら診断がつく。


百日咳は咳が出ている間、菌を周囲にばらまくので、

本人が咳でつらいだけでなく、周りに感染させる恐れが高い。


適切に薬を使えば、5日から一週間で菌が出てこなくなるとされている。


咳が続いている方は、一度医師に相談してみてはいかがだろうか。


ちなみに、咳が出る方は、必ずマスクをして、咳をする際は口と鼻を押さえるのが、

「咳エチケット」として推奨されている。

2010年7月24日 by Dr.ひげくま

私はDr.ひげくま。

しばらくの間、駄文におつきあいいただきたい。


Aさんは、認知症を発症し、グループホームという施設に入っている。

私は月に2回その施設に往診に行っており、Aさんとももう1年近いお付き合いだ。

Aさんの認知症は徐々にではあるが確実に進行し、とうとう食べることも忘れてしまったようだ。


食事をしないと体は弱っていく一方なので、何らかの対処を考えなければならない。

しかし、Aさんの認知症が劇的によくなる見込みはなく、いずれは何もできなくなるだろう。


ご家族と相談した。

認知症とは脳の老化が進んで、できていたことができなくなっていく状態である。

状態が進むと生きていくことに不可欠な行動すらできなくなる。

Aさんはまさにその段階に入ってきた、と伝えた。

この後の道筋は、存命を第一に考えるならば、

胃まで管を入れて流動食を補給する。

点滴で栄養分を補給する。

のどちらかになる。

どちらにしても、現在全くの寝たきりではないAさんの状態では、

安全面から、管を抜かれないためにベッドに固定させていただくことになる。

これは新たに寝たきりの状態になってもらうということを意味する。


ただ、Aさんの今後の見通しまで考えて、それがいいことかどうか。

家族の了解をいただければ、最低限の水分補給の点滴を外来で続ける道もある。

これなら、1回数時間で済み、今の施設でもう少しの間過ごせる。

ただし、残念ながら今後の見通しとしてはジリ貧で、先述の方法に比べれば、

Aさんの寿命はずっと短いものとなるだろう。


息子さんは、病院に入院しての管からの流動食補給を望まれた。

そのほうが安心だから、ということだ。


この問題に正解も誤答もない。

家族に悔いが残らないような選択をしてもらうしかない。

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